第44章 Aiming for an “APPLE”
「自己破壊プログラムは停止されたんじゃ?」
『ぼ、僕にもわかりませんよぉ! エドァルドさんだって一緒に隔離処理したじゃないですかぁ!』
「それは、そうですけど……」
えぐえぐと涙ぐむライヴィスを責められる者がいるだろうか、
いやいない(反語)。
エドの質問に答えられる存在は、この異変の黒幕そのものだろう。
中空に映し出されたディスプレイは、えぐえぐしているライヴィスを映しつつ、その横で何らかの演算処理を行っている。
滝のように流れていく文字や数字は、ライヴィスが泣きながらも高速タイピングしていることを示していた。
その横では、トーリスが手元のディスプレイを食い入るように見ている。
『エドァルドさんたちのタイムゾーンで言うと……あ、あと3時間もありません』
「つまり……あと3時間以内に、パスワードを割り出して、“靄”がうようよいる外に出て、中央コンピューターにたどり着き、システムをハッキングしろと……そうしないとプログラムが壊れると?」
『は、はいぃ……』
えぐえぐと泣くライヴィス。
真っ青になって固まるエドァルド。
いまいちわかっていないキョトン顔のトーリス。と私。
リビングに行くと、エドはディスプレイを開き、現実世界にいるトーリスとライヴィスと通信を始めていた。
そこで告げられたのは、「あと3時間足らずでこの世界が自壊する」というものだった。
よくわからないが、崩壊に巻き込まれないように、接続を切らなければならないらしい。
――でも、ヨンスや香は?
「なんだか、さっきより数が増えてませんかね……」
エドの声につられて窓を見ると、ちょうど窓の外を黒い靄が通り過ぎた。
街並みをあてどなく彷徨うソレは、人型でなく、ぼんやりとした四角とも丸とも似つかない形をしている。
どうにも話がかみ合わないと思ったので聞いてみたら、エドァルドには、私を襲った“人型の黒い靄”は、“黒い靄を纏った香くん”に見えていたらしい。
しかも、ソースコードを解析すると、いろいろと書き換えられていたという。
ライヴィスたちの解析では、香くんを元に戻すこと――ウイルスを除去すること――も、電波塔の中央コンピューターなら可能らしい。