第42章 諸刃の刃の切っ先で
これが何なのか、何に使うものなの、どう使えばいいのか。
アーサー(偽)はなにも教えてくれなかった。
だから、いつなんどき必要になるかわからなかったので、いつも携行していたのだった。
「これをくれた人が敵か味方か、私にはわかりません……でも」
直感が告げていた。
「みなさんは“これ”を探していたんですね?」
「……っ!」
息をのむ3人の間を、するりと通り抜ける。
私の身体は、私の意思とは関係なしに動いていた。
周辺の機器のひとつにチップを読み込ませる。
どこが挿入口かなんてわかるはずなかったのに、私の手は正しい位置を知っていた。
瞬間、視界に青いフィルターがかかる。
さっきまでデスクトップの風景画を映し出していたディスプレイが、真っ青なブルースクリーンになっていた。
「えっ……嘘……!?」
言葉を失うエドァルドも構わず、ディスプレイの上部から白文字が滝のごとく流れ落ち始める。
とても読めない速度で文字が流れていくが、
「これ……さっきの隠しファイルです! あのチップを読み込んでいます!」
ライヴィスがほとんど叫ぶように言った。
その目は無我夢中で白文字を追っている。
キーボードに手をかけた体勢で、エドァルドが凍りついていた。
なにか操作を加えるべきか、そうでないのか逡巡している。
トーリスは呆気にとられ、口をポカンを開けて立ち尽くしていた。
やがて「ブツン」と電源が切られたときの音がして、唐突に画面が変わる。
視界に躍り出た映像に、呼吸が止まった。
あまりにも見覚えのある風景が、そこに広がっていたからだ。
――巨大なディスプレイは、見慣れたゴーストタウンを映し出していた。