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【ヘタリア】周波数0325【APH】

第41章 暗鬼による確信による、


ふわり、冷気が背中をなでる。

場違いなまでに明るい声は、すぐ頭上からだ。

声の主は、きゅ、と私抱きすくめる。

「これも君のシナリオどおり?」

そう言った、私を見下ろすすみれ色の瞳が、愉しそうに弧を描く。

――イヴァン・ブランギンスキ、その人だった。

背後から、ほとんど羽交い締めのように四肢の自由を奪われていた。

力が強いわけではない。

むしろ、傷つけるつもりはないとでもいうように、その手つきは優しい。

これから頭でも撫でられそうな具合だ。

なのに、イヴァンの腕から抜け出せそうな気がしないのは、震えるくらいの恐怖を感じるのは、どうしてなのか――

キン!

「わぁっ」

金属音とイヴァンの緊張感のない声がほぼ同時に上がり、私の体が自由を取り戻す。

前につんのめりそうになるのを堪え、首だけを動かして音の方向を見ると――菊とイヴァンが、日本刀と水道管でつばぜり合いをしていた。

「公子さんに何か御用ですか」

「きっとみんなと同じだよ?」

菊の瞳が暗く閃く。

無表情に一太刀、真正面からそれを受けるイヴァン。

二人の声に温度はなかった。

菊がここまで怒りを露にしているのは、初めて見る。

いや、菊の険しい表情は、怪我の痛みを堪えているからもあるだろう。

「逃げてくださいっ!」

菊が短く叫ぶ。

その瞳はイヴァンを見据えたままだ。

遅れて、私に向かって放たれた言葉だと理解する。
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