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【ヘタリア】周波数0325【APH】

第40章 疑心または月夜にて


幾度目かのもう慣れた酩酊感から目を醒ますと、足下でざり、という音が鳴った。

曇り空とアスファルトの間に、私は立っていた。

あたりを見回さずとも、風のない大気で理解する。

ゴーストタウンに来たのだ。

と、視界のはしで金髪が揺れる。

はっと顔をあげると、フランシスが目の前にいた。

そばでアーサーも立ち上がろうとしている。

「よかった……!」

一人ではないこと、真っ白な空間でないことに安堵して声がもれた。

呼ばれたフランシスの顔は、突然のできごとに戸惑っていたが、私と視線を合わせるなりニコっと笑ってみせた。

彼はたしか、ここに来るのは初めてのはずだ。

「びっくりしたよ、ここが例の場所?」

いつもと変わらない、軽い口調。軽い笑み。

まるで、私を安心させようとしているかのように。

――私が、しっかりしなくちゃ



私の背中越しで、フランシスはなにかに視線を注いでいた。

その視線を追うように振り返ろうとして、唐突に、彼の笑みが消える。

その碧眼が、ゆっくりと見開いていく。

「公子ちゃんっ!」

鋭い警笛のような声を聞いた瞬間、体が吹き飛ばされた。

そのまま真横の地面にたたきつけられる。

けれど体は、それほど衝突の痛みを訴えなかった。

私が受けとるはずだった痛みを、フランシスが受けとっていたからだ。

「なっ……!?」

言葉を失うアーサーのうめきも、よく聞こえなかった。

「え……」

いやな感覚が、左の腰を這いあがる。

“それ”はぬる、と左手にもついて、一番見たくない色に手を染めあげていく。

私をかばうように抱きかかえるフランシスの腹部に、赤い染みがうごめいていた。

その赤の延長線上、フランシスの肩ごしに、“彼”はいた。

「マシュー……?」

銃を構え、穏やかに笑むマシューが。
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