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【ヘタリア】周波数0325【APH】

第37章 第二部 プロローグ/プログラム起動


来たときに通った角をまがる。

そこで、眼前の廊下が、ただの暗闇でないことに気づいた。

廊下の先の床には、窓から月明かりがさしこんでいる。

しかしそれとは別に、淡い光の粒子が暗闇に溢れていた。

アルフレッドが“それ”を見るのは、二度目になる。

「い――行かないでくれっ!」

ほとんど悲鳴のような声がアルフレッドの口からこぼれた。

きらきらした粒子は、マシューごと周囲の風景を歪ませている。

くるりとマシューが振り返った。

そのまなざしは、大丈夫だよとでもいうように優しい。

――間に合わ、ない。

「マシュー!」

粒子とともに彼の姿がかき消える。

廊下に残響するマシューを呼ぶ声が、やがてサイレンにかき消され聞こえなくなっていった。

行き場をなくした手が、みじめに空をさまよう。

光の残滓が、月明かりの中にとけていく。

それは、すでに移動ができなくなっている事実を、アルフレッドに突きつけていた。

「……マシュー……」

茫然と立ちすくむアルフレッドの耳元で、サイレンだけが鳴り響いていた。
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