第28章 on the planned system
「あっあの……私、どうしたら――……」
情けない。
捻り出した声は蚊の鳴く音量で、今にも泣きそうだった。
「――っ」
アントーニョの顔が苦悶に歪む。
なにを悩んでいるのか、まるで過酷な二択に迫られているような顔だ。
「……公子、ちゃん」
アントーニョが、すがりつくように私の手首を掴んだ。
そのまま手が下がっていき、私の手を握る。
力が強くて、少し痛い。
狂気に踏み出す一歩手前の緑眼が、私を真っ直ぐ見つめる。
次の瞬間、腕が強く引っ張られた。
アントーニョが走り出していたのだ。
手をつながれている私も、引きずられるように走りだす。
わけもわからないまま、最初に来た地点が見えてきた。
アントーニョは減速しない。
鉄の匂いが遠くなっていく。
それに代わるように、視界がぐらついてくる。
元いた地点に到着すると同時に、デジャブじみた感覚が脳を貫いた。
なにかがカチッとはまった――そんな気がした。