第28章 on the planned system
二人がサッと身を固くしたのがわかった。
冷えた目つきで部屋を注視している。
室内は無人なのだろう。
ならば、物音などするはずがない。
ということは――侵入者?
「……開けるで」
アントーニョの小声の号令、頷くロヴィーノと私。
ひと呼吸の後、扉が開け放たれる。
「「「…………え?」」」
侵入者でもなく、悲鳴でもなく、銃声でもなく。
間抜けな呟きが、三重奏を奏でた。
目に飛び込んできたのは、本、だった。
部屋の中央のカーペットに、投げ捨てられたように横たわっている。
4、5冊あり、雑誌のように薄い。
その内の一冊の表紙には、スク水を来た小学生低学年の少女が、猫耳をつけ、赤いランドセルをしょって、リコーダーをくわえつつ何故か顔を赤らめていた。
もう一冊は中が見えていた。
どうやら漫画らしく、体のラインがくっきり出るぴちぴちの衣装を来た、青緑色の長いツインテールで、ヘッドセットをつけた少女が、胸元を見せびらかすようなポーズでウィンクをしているのが見えた。
もう一冊は表紙だというのにやたらと肌色が目立ち――ってどう見ても圧倒的に“薄い本”だよこれ!
「な……なんなんこれ……」
「ここ再帰点なんじゃねーの」
拍子抜けした二人がぼやいている。
なぜだか本田氏の顔が思い浮かんだ。
そういや「薄い本が消えるんですよね~」みたいなことを仰っていた気がするぜ……。
つまり本田氏の薄い本の棚が消失点で、この部屋の中央が再帰点、ということだろうか。
私たちが盛大に脱力していると、
「まだ、行けそうだな」
なにかの端末を手にしたロヴィーノが、硬い声色でそう言った。