第26章 電波塔クラスレート
その後、夕飯としてギルにおにぎりを献上した。
拾ってきた子犬に、こっそり餌をやるような気分だった。
座布団に正座でおにぎりと緑茶、という純日本式のおもてなしを、ギルは大層喜んでいた。
「ってぇー……まだ痺れが……うぁあッ!」
「もうこんな時間じゃないですか!」
純日本式のおもてなしの余韻にひたるギルに、時計を指さして言った。
20時、そろそろ今日が終わる。
「くっそ……俺様が……これしきのことで……っ!!」
「どうすればいいと思いますか?」
なおも私の話を聞かないギルの足を、手近にあったリモコンでつつく。
断末魔をあげてのけぞったギルに、質問をくり返した。
「今すぐ帰りたいですか?」
ギルは若干潤んだ目をむいて、なにか言葉を飲みこんでから言った。
「お前はなにも心配しなくていい。俺様の言うとおりにしてろ」
「はぁ……」
とは申しましても……。
「パソコン使ってもいいか?」
「あ、はいどうぞ」
依然として、ギルのペースにのせられたままだ。
パソコンをひらいたギルは、それから図書館のときのように、集中して画面に食い入っていた。
“エントロピー”、“物質波”、よくわからない単語がちらっと見えた。
邪魔するのも悪いと思い、23時を過ぎてギルに一言かけたあと、ひとまず私は睡眠をとることにした。
2時間後の目覚ましがきちんと鳴ることを祈って――。