第26章 電波塔クラスレート
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そこから帰ったあとは、てんやわんやの騒ぎだった。
雨の中走って膝から下がひどい有様になったり。
やっとの思いで帰ったら、タッチの差で母が帰ってきて内臓という内臓が縮み上がったり。
シャワーを浴びたくとも、『ギルを自室に一人にしなければならない』というかつてないほど世紀末的な決断に迫られたり……
「最低です!!!」
「わ、悪かった! けど机の上にほったらかしにしてたお前だって――」
「不可抗力だとでも言うんですか!」
「わかったよ俺が全面的に悪かったって! あんま大声出すなよ、家族がいるんだろ?」
ドアの外を指さすギル。
押し黙る私。
――慌てていたせいか、入浴の前、私は携帯の画面を見えるままにしていたらしい。
そこを、ギルに覗かれたという次第だ。
現行犯逮捕である。
確かに、私にも非があるといえばあるが、見られたものがものなのだ。
「内容は早く忘れてくださいね」
「そんなにじっくり見てねーよ」
「内容は早く忘れてくださいね」
「すみませんでした!」
なげやりにも聞こえるギルの声を耳にしながら、メモ機能をひらく。
そこには、一番最初、菊と出会ったときからの記録が、日記形式で綴られていた。