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【ヘタリア】周波数0325【APH】

第26章 電波塔クラスレート


雨に濡れて、にぶい銀色にそびえる電波塔。

そこが、彼の目的地だった。

滴を落とす鉄塔はごくありふれた形をしていて、わざわざ足を運ぶ理由がわからなかった。

それとも、私の与り知らぬなにかが、ここに隠されているんだろうか?

「ねぇ、ギル――」

そう問おうとした声が、ふつりと抜け落ちる。

「……」

横顔が。

鉄塔を見上げるギルの横顔が、あまりに綺麗で。

思わず目を奪われてしまった。

憂いを帯びた無表情からは、なにも窺い知ることができない。

ものも言わずに、ただ、電波塔を見上げている。

声を発するのが悪いことのように感じられた。

私も沈黙のまま、仕方なく電波塔に目をやる。

塔は私たちを冷たく見下ろし、無言で雨に打たれていた。

なんの変哲もない、いつも風景の一部となって、意識の底に埋没している電波塔だった。

「……」

「……」

しばらく、2人無言で電波塔を見続ける、という奇妙な沈黙が流れていた。
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