第26章 電波塔クラスレート
どしゃ降りとはいかないまでも、外は結構な雨が降っていた。
ギルにレインコートを被せ、足早に歩き出す。
考えることばかりで余裕がなくなっていた。
だが今は、もっと大切な、優先すべきことがある。
家に誰もいないうちに帰ることだ!
「おい、ちょっと待て」
突如肩を止められる。
なにかと思えば、ギルが家とは違う方向を指さしていた。
「寄りたいとこがある」
「えぇっ!? で、でも時間が――」
「つべこべ言ってんじゃねーよ、ついて来い!」
横暴にもそう宣言すると、私の手首を乱暴に掴んで、さっさと歩き出してしまった。
寄りたいとこって、一体どこへ行くというのやら。
近所のお団子屋さんとかだったら、向こうでルートとエリザにしばいてもらおう。
ギルの足取りは、たしかな目的地があるようだ。
迷いなく進んでいるが……あなたここでは異世界人ですよね?
そんなことを思っているうちに、ギルの足が止まった。
そこは、思いもよらない場所だった。