第25章 雨の中へ
「いやいや……いやいやダメですよ! なに考えてんですか!」
突拍子もない外出宣言に、私は即座に反対した。
頭ごなしの拒絶にギルが口をとがらせる。
「なんでだよ。お前も向こうでしてただろ」
「それは……そうなんですけれども……」
トリップ先で好き勝手出かけていた(つれまわされた)のは事実だ。
だが、逆パターンとなっては話が違う。
私はためしに、ギルが外に出て、付近の図書館に行くのを想像してみた。
銀髪赤眼の「二次元からそのまま出てきました☆」な顔、ご覧のとおり横柄な俺様姿勢、調べている対象は、こちらの世界ではオカシイ人扱い間違いなしの“異変”――
「――ダメです、ずえぇーったいダメです!!」
司書の人に『俺様にテレポーテーションについての書籍を洗いざらい渡せ!』とドヤ顔中二で脅迫するのが目に見えた。
「世界を救うためなんだ」
「なんかそれっぽい表情してもダメです!」
「俺様のいうことが聞けないのか?」
「はいムリです」
「……」
「捨てられた子犬みたいな顔してもダメです!」
どことなくムカつくショボーンとした顔を睨んでいると、お前さぁ、とギルがため息混じりに言う。
それから私の体を指さした。
その指の動きにつられ、目が胸元に落ちていく。
「とりあえず着替えろ」
まだメイド服だった。