第24章 下位互換カソード
ひとしきり笑ったあと、思い出したように私は機械を手にとった。
私の耳元で、ギルが殴って壊したものだ(なんちゅうことを)。
材質は金属とプラスチックが主だ。
よく見ると赤い導線や、ドラマでよく見るICチップのようなものもある。
全体が砕かれていて、もう修復不可能な域だった。
「これは……?」
「発信器か、盗聴器か」
「えぇっ!?」
は、発信器だって!?
驚きに口があんぐりする。
たしかに、言われてみると、形にも大きさにも発信器の面影がある。
誰が、またどうして、と唖然としていると、
「いや――その両方かもしんねぇ」
しげしげと眺めながらギルが言った。
「両方!? 盗聴機能付き発信器ってこと!?」
「まぁGPSの類だ。それだけでも最悪だが、もっと最悪なのは、ただのGPSじゃなくて“GLONASS”だってことだ」
「GLONASS?」
「……GPSのロシア版だ」
「…………はい?」
サァーッと音でも流れてしまいそうなくらい、背筋が冷えて後頭部までぞわりとした。
いつ付けられたのかわからないが、「またあとで」って。
、、、、、、
そういうことだったの? え? どういうことなの?
「GPSはアメリカの衛星をつかって位置特定をしている。それに元々は軍用に開発されたんだ。
ロシアがアメリカに頼ると思うか? 当然自分らでやろうとするだろ。
壊しちまったから確証はねぇが……このチップや内部の配置、GLONASSだと思うぜ」
私がポケーとしている間、ペラペラとギルが喋っていたが、半分も耳に入っていない気がする。
ろっさまが(限りなく邪悪な)なにかを考えて、私に発信器をつけたことだけ理解できた。