第21章 乖離する声を
「――量子テレポーテーションについてだが」
ルートが厳かに、話し始めたからだ。
聞く者を黙らせる迫力に、私たちは頷くしかない。
ところが、
「あのさー……俺、さっきの説明聞いてなかったんだよね」
フェリちゃんが恐る恐る、しかしあくまでも朗らかな声色で口をだした。
ルートはひとつため息を吐いて、やれやれと説明し出す。
枢軸には甘いよな隊長。
「量子テレポーテーションとはざっくり言うと、完全なクローンを作ることだ」
「瞬間移動させるんじゃなくて?」
「移動させるのは“情報”だ」
「?」
キョトンとフェリちゃんが首を傾げた。
最後まで聞けと無言で言いながら、ルートは続ける。
「この前のテレポートを例にとる。
まず駐車場の消失点で、フェリシアーノの体を構成する原子を、完全に量子化――テレポートしやすい状態にする。
スキャナに取り込むというか、コピー機にスキャンさせるようなものだと考えていい」
スキャンという言葉に、フェリちゃんがヒィッ! と短く叫ぶ。
「そのスキャンした情報を、カークランド宅の再帰点へ送る」
「ヴェー……」
「カークランド宅の再帰点で、その情報からフェリシアーノの体を再実体化させる。
このプロセスが瞬時に行われるのが、量子テレポーテーションだ」
「なんか……FAXみたいだね」
フェリちゃんがふと呟いた。
紙をスキャンさせ、送り、その送り先で再び紙に直す。
あながち間違っていない。
ルートはためらいがちに頷いてから、フェリちゃんをビシッと指さした。