第1章 プロローグ
眩暈が、する。
頭がクラクラして、吐き気がこみ上げた。
いったいなにが起きた?
ぼんやりと思考を巡らせる。
覚えているのは、地震、ノイズ、それから――誰かの声。
えーと、それから?
それから……ラジオ、そうラジオをつけたんだ。
そしたら急に耳鳴りがして――
不意に、思考が途切れた。
見えるはずのないものが、視界の端を横切ったからだ。
それは、湯けむり。
自室にいる私が、お目にかかれるわけないシロモノ。
気のせいか、空気までもが温かく湿っている。
まるでお風呂場にいるみたいな……
――ガタ
「!?」
唐突な物音に肩が跳ねあがった。
私はひどい眩暈に頭を抱え、俯いたままだ。
だからその正体がまだ見えない。
家には私しかいないはず。
なら――!?