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【ヘタリア】周波数0325【APH】

第20章 追跡先へ


しかしそこは紳士、聞きたいことを聞き終わったようだ。

大人しくルートに譲ろうと席を立ちかける。

そこで私はハッとなって、アーサーの腕を思わず掴んだ。

「なっ、なんだ!?」

ギョッとしてアーサーは私を見る。

「――“わからないことばかりなのに。”そう、言ってましたよね」

アーサーの瞳が揺らいだ。

私と同じ言葉を放った誰かを、私を透かして見ているのか。

「心配なんです。ほんとはわかってるんでしょう?」

「……っ」

アーサーは言葉につまっていた。

焦っているのだ、彼もまた。

早く異変を解決したいと、他愛ない日常を取り戻したいと。

――多少の危険なんて構ってられない、と。

「だからお願いです。緊急時以外は使わないと、約束してくれますか?」

真っ直ぐに見つめる。

頷くまで、同意の色が瞳に宿るまで、離してやらないつもりだった。

私だけではなく、菊やフェリちゃん、ルートも真剣な眼差しでいた。

アーサーは少しの戸惑いを見せたあと、口をきゅっと結ぶ。

そして、ゆっくりと頷いた。

「……あぁ、約束する」

「その言葉忘れませんよ」

微笑しながらそう言うと、「しっ紳士に二言はねぇ!」と言い返された。

親分がいたらどう反応するのやら、と思うとくすりとしてしまう。

「なにニヤニヤしてんだ! つか、いっ、いい加減離しやがれ!」

「あっと、これはすみません」

途端わたわたと騒がしくなるアーサー。

頬に朱色がさしている。

どう落ち着かせようか悩んでいると、その必要はすぐになくなった。
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