第17章 シュガーポットの在処は
リビング、ダイニング、バスルームやトイレまで調べた。
それでも人影ひとつ見当たらない。
残るは、書斎ともいうべきヨンスの部屋だ。
「入るヨ!」
乱暴に扉を開け放つ。
部屋じゅうを見渡し歩き回るが、誰もいない。
ただパソコンが空気を吐き出す音と、カシャカシャという作動音が響いていた。
ここにいなければ、本当に家のどこにもいないことになってしまう。
なにか手がかりはないかと、ディスプレイを覗き込んだ。
それを見た瞬間、総毛立つ。
「――い、いやっ!!」
思わず声をあげて後ずさる。
そこには――真っ青なディスプレイ一面は、“error”の文字で埋め尽くされていた。
外出するなら、ヨンスは電源を落とすだろう。
しかし電源のランプがついていることから、シャットダウンしていないことがわかる。
、、、、、
だから、操作の結果こんな画面になった、と考えるのが妥当だ。
沸きだしたある考えにとり憑かれそうになり、顔を歪めて頭を振った。
なにもかもがおかしい。
こんな気味の悪い画面、全開の冷蔵庫、なにかがあったとしか思えない。
湾は携帯を取り出した。
慣れた動作なのに、なぜかうまく操作できずクリックミスを繰り返す。
掛けた先はヨンスの携帯。
――お願い、出て! なにもないって元気な声を聞かせて……!
次の瞬間、背後で着信音が鳴り響いた。
瞳が見開く。
あるはずのない音に、鳴ってはいけない音の方に、首がカクカクと向いていく。
「……う、そ……そんな――!?」
扉のすぐそば、書類の山に、見慣れた携帯が着信を知らせていた。
紛れもなくそれは、ヨンスの携帯だった。
「なんで……どうして……っ!!」
彼女は、鳴り続ける携帯を呆然と見つめるしかなかった。