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【ヘタリア】周波数0325【APH】

第11章 ある報告書より


「そんなんありえねぇだろっ!」

荒げた声がとびだす。

半ば睨みつけるように菊を見る。

しかし、あろうことか

「……」

彼は、薄い笑みを口元に浮かべていた。

嘲笑のような、あるいは憐憫のような。

そのどこか妖艶で、この上なく不吉な様相にアーサーは声を飲みこんだ。



「……公子さんは別の世界、いえ、別の次元からいらっしゃった方です」

黙祷にも似たしばしの沈黙を引き裂いて、唐突に菊は言った。

「……すまん、もう一度言ってくれるか?」

「上位次元、外側……ご本人もわからないようですが、私たちのいるこの宇宙とは、全くちがった宇宙の地球からの来訪者であることは確かです」

「待て、待ってくれ、菊」

あまりに突拍子もない申告に、アーサーは掻き消すように大声をだす。

――別世界? 別次元?

眼前の人物がおかしくなったのかと思い、菊を凝視した。

けれどその瞳の黒には、濁りなく煌々と冷えた光が宿っている。

「……俺には、菊がなにを言ってんのかさっぱりわかんねぇよ」

全身から絞り出すように、そう吐きだした。

すると、アーサーの頭にこつんと何かが当たる。

みれば紙ナプキンで折られた手裏剣だった。

菊がふわりと、しかしやや余裕がない笑みを浮かべて言う。

「“ありえないなんて悠長なことを言ってる場合じゃない”、ということです」

「……」

支離滅裂な状況に打ちひしがれる。

アーサーは、“359nt”という無表情な数字をいつまでも見つめていた。
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