第4章 恋人同士の日常 ~跡部 景吾 編~
俺様に、淑やかで可憐でどこからどうみても【いい女】だと言える恋人がいる。
俺様の好みじゃねぇって?よく分かっているじゃねぇか。確かに、【それだけ】なら惚れたりはしなかった。
唯一、【普通】と違うのは……笑っちまうくらい潔くて神経が図太くて、腕っぷしがたつヤツと言うのが本質だった。
ホラ、今日も裏庭で定番の俺様のファンからの呼び出しを受けている最中だ。
10人ほどに囲まれた中央で、腕を組んで仁王立ち出来るのはコイツくらいのものだろ。
仕方ねぇ……そろそろ助け船出しとくか。あ、勘違いするなよ?【助け船】を出すのは、俺様の女にでない。
跡部『毎日、てめぇらも飽きねぇな。いつまで俺様の女を引き留めとおくつもりだ?』
悲鳴に近い金切り声が響き渡る。
藤堂『あら、こんなに熱烈に慕われて良かったじゃないの?』
跡部『ったく、相変わらずだな。』
藤堂『こういう私だからこそ、惚れたんじゃなかったっけ?』
あ~、五月蝿い。香の自信満々な台詞に、ブーイングの叫び声。
跡部『何だ、よく分かっているじゃねぇか。』
ニヤリとして、香の腕を引き寄せては抱き止める。またしても、金切り声炸裂。
藤堂『こういう状況になることを気にしているのなら、このような状況は控えてくれない?』
跡部『あ~ん?俺様がイチイチ、ギャラリーを気にするとでも思ってんのか。』
香は、残念そうな顔をして……【思わない】と。
跡部『で、いつまでお前らは見てるつもりなんだ?ま、俺様がコイツを可愛がっているところを見たいと言うなら気にはしねぇがな。』
そうやって、今日もギャラリーを排除する。
静かになった裏庭。やかましかったのが嘘のようだ。
藤堂『で、いつまでこのままなの?』
跡部『それは、俺様を誘ってんのか?』
返事を聞く前に、恋人にキスをする。ほぼ毎日の繰り返し……。
少しだけ頬を赤くするコイツが、誰よりも可愛いと思う瞬間。髪を一撫でしては、俺様が一番見える観客席へ誘導していく。
さて、俺様の優雅で華麗なテニスを見せて惚れ直させてやろう。