第28章 恋人同士の日常 ~桃城 武 編~
あ~、まただ……。
昼休みには、あいつは颯爽と消えて……きっと、今頃は体育館だ。
嫌、行くのがダメなわけじゃねぇよ。たださ……。
桃城『何で、俺を誘わねぇんだよ!』
体育館で見付けた、彼女に向かって叫んだ。
藤堂『待ってたよ~、武くん!』
桃城『待ってたよ~、じゃねぇよ。誘えよ!』
藤堂『だって、いっぱい食べるようだったし…。あんなに山積みのパンを並べてたら時間がかかるかなって。』
コイツ……俺といるより、周りのコイツらと居る方がいいのか?
藤堂『じゃぁ、武くん行くよ~!』
って、中学生女子がスパイクサーブかよ!
それを拾う俺も俺だけど…。結局、ヒィートアップして盛り上がるんだけどよ…。
あの海堂ですら彼女と二人っきりの時を見掛けるし、先輩たちだって…あ、越前ですら…。
何か、悲しくなってきた…。やっぱりコイツ……俺を彼氏として認識してないんじゃねぇか?
予鈴が鳴り響くと、みんな教室へと向かう。俺は、香を呼び止めた。
桃城『今日、一緒に帰ろうぜ。』
彼女は、キョトンとしている。
藤堂『どうしたの?いつも一緒に帰ってるじゃない。』
桃城『あ、嫌……そうだったよな。じゃ、またな。』
放課後の部活。モヤモヤしたまま、力任せに海堂とラリー。
桃城『何なんだよ……俺はこんなに香と一緒に居たいのによーーーーーっ!!』
海堂の動きが止まり……周りのヤツらも俺を凝視。
桃城『あ……今、俺…言葉に出てた?』
大石『も、桃……そういうことは、本人に言った方がいいんじゃないか?』
部活が終わり……部室を出た俺の目の前に彼女がいた。
藤堂『武くん……さっきの…体育館にも聞こえて来たよ。みんなに冷やかされちゃった。』
桃城『えっ…わ、悪い……。』
藤堂『悪くなんか無いよ。彼氏にそこまで想われて嫌な筈無いよ。さ、帰ろ!』
彼女から手を繋がれ、家へと向かう。
藤堂『武くん…。』
桃城『ん?あっ!』
彼女へ顔を向けた時、ほっぺたに柔らかい感触。
藤堂『大好き!』
桃城『お、俺の方がもっと好きだ!』
テニス部員たち『バカップルだな…アイツら。』