第27章 恋人同士の日常 ~幸村 精市 編~
俺にとって、中学最後のバレンタインデー。
勿論、マネージャーやファンの子らから沢山もらってる。それは素直に有り難いと思うし感謝してる。
ただ……俺の大切な彼女を出し抜こうとか、あわよくば…そんな風に考える子もいて、少々腹に据えかねる時があるんだ。
どんなに頑張られても、俺の気持ちは彼女にしかない。それは断言出来る。
俺を俺でいさせてくれて、特別視しない凄く聡明な人なんだ。
だから…心に受けた傷を、俺にすら感知させない……。
ある意味、凄いよね。
藤堂『何か考え事?』
その上、勘が鋭いときてる。きっと、彼女にとっての俺は……周りが知っている俺ではないのだろう。
幸村『みんな、最近浮かれているなと思っていただけよ。』
藤堂『バレンタインデーだからね。』
幸村『香は、勿論俺にくれるよね。』
藤堂『うん。でも、内容は誰にも秘密。楽しみにしててね。』
友達にすら話せば、内容は筒抜けになりそうらしい。悪気がないようで、咎めることも出来ないようだ。
幸村『楽しみにしてる。俺としては、香から貰えるなら何でも嬉しいよ。』
彼女の頭を撫でれば、『知ってる』との返事。
それから…当日。
既に、靴箱や机の上にも中にも溜め息が出そうなくらいのプレゼントの山。その上、手渡しでくれる子たちも……。
彼女からはって?一番に貰ったよ。本当にサプライズ…。
朝早くに彼女からのメール。その文面には……俺が必ず開ける棚の引き出し。
いつ忍ばせておいたのか……可愛らしいトリュフのチョコと、手編みのマフラーが存在していた。
勿論、それを身に付けて登校。誰もが、そのマフラーの出来映えに感嘆の声をあげていた。
彼女は手先が器用で、彼氏としても嬉しい。あ、チョコは一つだけ……。甘い彼女からの気持ちを堪能済。
幸村『有難う。本当に驚かされたよ。』
ドッキリは、母を巻き込んでいたらしい。本当、母と彼女は常日頃から仲がいい。
そうだ……今日の帰りには、お礼に香に甘いキスでも…。俺の気持ちも一緒に……。
【香、大好きだよ。】