第26章 恋人同士の日常 ~南 健太郎 編~
先日彼女に借りた本を返そうと、香の教室にくれば…中が何やら賑やかだった。
賑やかな輪の中には、想像通りの千石。何で寄によって、彼女と千石が同じクラスなんだ…。
全くもって、気苦労が絶えない…。と言うのも、どこまで本気なのか分からないが…千石は彼女にチョッカイを出している。
藤堂『あ、健太郎くん!』
アイツが声をあげては、俺の元へと小走りに近づいてきた。今日も彼女のこの笑顔に癒される…。
南『今日も賑やかだな。』
藤堂『そうだね。あ、本?もう、読んじゃったの?』
南『ああ。つい引き込まれてな。』
藤堂『ちょっと待っててね。』
本を受け取っては、席へと戻っていく。鞄の中から、一冊の本を取り出せば…何かを思い出したようで笑顔になった。
藤堂『お待たせ。はい、次の本。』
南『あ、ありがとう。』
藤堂『ねぇ、時間…いい?話したいんだけど。』
南『ああ。』
藤堂『○○(彼女の友人の名前)、彼氏と話てくるね~。』
いつだってそうだ…。普段は俺の名前だが、こう言うときは決まって、【彼氏】と言う。
その言葉を聞くたびに、俺の気持ちは彼女でいっぱいになる。
藤堂『あ、そうだ。約束通り、お弁当作ってきたからね。楽しみにしてて。』
南『ああ。楽しみにしてる。』
それにしても、俺と話している時の彼女は…いつも笑顔だ。真面目すぎる俺なんかと話しても、そう楽しい話になんて…。
藤堂『…?健太郎くん、聞いてる?』
南『あ、すまん。つい、香に見とれて……あっ!!?』
しかし、彼女は嫌な顔なんてしない。本当に…本当に嬉しそうに笑う。
藤堂『いいよ、健太郎くんになら。大好きな彼氏だもん。』
キュッ……袖の裾を小さく掴み、テレ笑いの彼女。あ、俺……今の【キュッ】で、いつも心を持っていかれるんだよなぁ…。
南『なぁ、さっき何か思い出し笑い…してなかったか?』
藤堂『え、見てた?恥ずかしいなぁ……。あれはね……昨日、キスしたの思い出して……その……健太郎くんと付き合って幸せだなぁって思ったら…。』
こうして、俺の心を簡単に…鷲掴みにするんだよな。