第21章 恋人同士の日常 ~大石 秀一郎 編~
先日から風邪をこじらせ、学校を休んだ彼女。流石に、三日目となれば恋しくなって仕方無い。
俺の唯一無二の精神安定剤のような存在だからこそ、尚更だ。
それでも、ただ心配したメールを送るだけの日々。本心は、彼女の声を聞きたくて仕方無いと言うのに…。
でも、体調が悪いのに無理をさせたくないのも本心。
さっきから何度、携帯の画面を確認したことか…。その度に、溜め息をつくだけなのに…。
大石『…香が恋しいな。』
言葉に出てしまう辺り、俺も重症なようだ。苦笑いを浮かべ、アクアリウムを覗き込む。
やがて、うとうととしてしまい……電話の音楽で目が覚めた。ぼんやりした目で画面を見れば、彼女の名前が表示されている。
大石『も、もしもし!香なのか?』
藤堂『こんばんは。ごめんなさい…。』
大石『えっ?』
藤堂『薬が効いていて、今目が覚めたんです。中々、熱が下がらなくて……でも、少しでも声がどうしても聞きたくて…。』
大石『構わないよ。俺も、声だけでも聞きたかったから。本当は……顔を見たいけど無理をさせたくないからさ。』
藤堂『秀一郎さん…。』
大石『何だい?』
藤堂『明日まで大事をとってお休みします。』
大石『そう…か。』
藤堂『……あの…電話だけでも、少しだけでいいから…。』
大石『分かった。可愛い彼女の頼みなら聞かない訳にはいかない。俺から電話するよ。』
俺の返答に、途端に明るくなった彼女の声。分かりやすくて本当に可愛い。
電話を切った後も、明日の約束からか気持ち的に楽になった俺。
大石『やはり、恋しい…。早く…アイツに触れたい。』
そんなことを思いながら、頬を赤くしていた。