第19章 恋人同士の日常 ~木更津 淳 編~
まただ……。ねぇ……最近、柳沢と一緒にいる所を見掛けるんだけど。
柳沢はいつものように、一方的に喋りまくっていて……香はと言うと……笑顔なんだよね。
旗から見たら、丸でカップルに見えないこともない。
何か……気になるんだけど。香って、人懐っこくて可愛いからさ。
でも、今は観月に呼ばれているから…。
で、今は早くも放課後。柳沢はそそくさといなくなり……何故か、校門のかげで再び姿を見たんだ。
何かを受け取っている柳沢。そして…渡していたのは、香。ねぇ……どうして、君はそんなに頬を赤くしてるの?
柳沢のこと……好きになったの?
二人の横を素通りして、寮へと足早に向かう。僕って……意気地がないなぁ。
現実を突き付けられるのが怖い…。見つけたのも、好きになったのも僕が先。
これでも、告白するまでかなり頑張ったんだ。誰にも取られたくなかったから……だから、頑張った。
物凄く頑張った!!
僕は身を翻して学校へと向かった。苦しいくらい走って、二人の…嫌、彼女の元へと。
木更津『香!』
藤堂『淳さん?』
驚いた顔をしている柳沢なんか見向きもせず、その場から彼女を連れ出した。
乱れた呼吸を整え、何とか言葉を口にしようとした時……。
観月『おや、淳くんと藤堂さんじゃないですか。あ、上手くいったんですか?』
木更津『上手くいったって?』
観月『藤堂さんから、淳くんの誕生日のお祝いをしたいから協力して欲しいと言われたんですよ。』
木更津『誕生日?』
藤堂『柳沢先輩に色々、淳さんの好きなものを聞き出して貰ってて…。』
そう言われたら、柳沢から何かと聞かれていたなと…今更ながら思い出した。
観月『良かったですね。大好きな彼女に、そんな風に想われて。では、ごゆっくり。』
静かになったその場所で、力が抜ける思いを味わっていた。
木更津『ねぇ、柳沢に何を渡していたの?』
藤堂『お二人が写っている写真です。』
彼女の小さな手には、キラキラしたテニスのラケットとボールのビーズアクセ。
ギュッ…抱き締めては、彼女の真意に触れて幸せを感じていた。