第15章 恋人同士の日常 ~菊丸 英二 編~
怒濤の1ヶ月だった。兎に角、今は何とか落ち着いて……ホッとしている。
今は昼休み。屋上で珍しく一人で空を見上げていた。
大石『エージ!』
菊丸『ん?あ、大石。どうかしたの?』
大石『それは俺の台詞だ。大丈夫…なのか?』
最近の俺の奇行を見れば、大石なら心配するに違いない。それでも、何も言わなかったのは…きっと、見守っていてくれていたから。
菊丸『香のこと……本当に、すご~く好きなんだよね。』
大石『見ていれば分かる。仲直り…出来たのか?』
菊丸『うん。いっぱい我が儘言ってきたけどさ……許してくれた。』
大石『そうか。良かったな。』
菊丸『いい子過ぎてさ……何言っても許されるって勘違いしてた。本当は、俺が年上で男だから守ってあげなきゃいけなかったのに。』
大石『彼女なら、そういうエージのことも理解してくれていたんじゃないか?』
菊丸『…うん。ホントに、大事にしなきゃバチが当たる。やっとさ、最近……香が主張してくれるようになったんだ。』
大石『兎に角、良かった。で、今はどうしてこんな所に一人で?』
菊丸『自分で自分に、カツを入れてたんだ。』
今思い出しても、頭が上がらない。人のいい香は、いつだって俺のことを一番に考えてくれていた。
お祖母ちゃんが体調が悪くて入院していても、大のお祖母ちゃん子なのにも関わらず傍に居てくれた。
本当は、心配で堪らなかっただろうに…。たまに、空返事をされて俺が拗ねて……やっぱり、頭が痛い。
菊丸『さぁ、香の顔でも見に行って来ようかにゃ。1日、5回は見ないとにゃ~。』
大石(それ……多くないのか?)
藤堂『あ、エージ先輩。探しましたよ。』
菊丸『どうかしたの?今、俺の方から会いに行こうかと思ってたのに。』
大石(あ~、ハニかんでる…彼女。心配しなくても大丈夫だったな。それより、エージのヤツ……俺の存在、もう忘れてるだろ。ハァ……俺も、彼女に会いに行こうか。)