第14章 恋人同士の日常 ~佐伯 虎次郎 編~
難しい顔をしている自覚はある。今だに夢ではないかと思う私がいる。
でも、現実に隣りを見上げれば虎次郎先輩がいて……手なんかも、所謂、恋人繋ぎ…。
佐伯『どうかしたのかい?』
つい、格好良すぎて見とれてしまっていた私。先輩は慌てる私を不審がることなく笑顔を向けてくれる。
私……今日も、生きていて良かったと実感している。先輩を想う女の子なんて星の数…。
藤堂『やっぱり、夢オチ…?』
佐伯『【夢】なんかじゃないよ。』
あ、私…今、言葉にしてた?でも、今の言葉…。
チラリと隣りを見上げれば、バッチリと視線が合い…最早、反らす勇気などない。
嫌、こんな往来で見つめあっているカップルは、旗から見れば痛々しいだけなのでは等と思ってしまう。
でも、出来るならば24時間見つめていても飽きないと思う。飽きるなんて言葉は、先輩には失礼だよね。
佐伯『香って、絶対、視線を反らさないよな。大抵、みんな目を反らすんだけど。』
え、私…痛々しいヤツだと思われてる?しかし、今更視線を……。
きっと、今の私の顔色は青くなっているに違いないと思う。あ、何か泣きそうかも…。
佐伯『そうやってさ……俺をフリーにしちゃダメだよ。』
何ですとっ!?目を離したら……浮気するとか?あ、そっちが本命?
佐伯『幾らでも見つめてくれていいから。』
キラ~ンと爽やかな笑顔を向けてくれる。アレ?私が思っていることと方向が違う?
藤堂『本当に?』
私は、先輩の言葉を真に受けることにした。自分でも楽観的だとは思う。
佐伯『本当だよ。好きな子になら、ずっと見てて欲しい。俺も、見るけど。』
【俺も、見るけど】……。
佐伯『目を離した隙に、取られたくないから。』
またしても、王子様スマイル。つられて笑えば、先輩は更に眩しい王子様スマイルを見せてくれた。
藤堂『それって、つまり…。』
佐伯『大好きだよってこと。香のこと。』
先輩……私をキュン死させるつもりですか。きっと、周りからはバカップルのレッテルを貼られている最中なんだろうなぁ…。