第11章 恋人同士の日常 ~海堂 薫 編~
今朝も、冷やかされて少々不機嫌な俺。
冷やかされる【理由】は、彼女の存在。俺が脅しただとか、無理強いさせたとか……。
藤堂『どうかしたの?』
不機嫌オーラを醸し出していると言うのに、普段と変わりなく声をかけてくるコイツは…ある意味【強者】だと俺ですら思う。
周りの奴らは、遠巻きで見ていて誰も近寄っては来ないと言うのに…。
藤堂『薫くん?』
海堂『何でもねぇ。』
こんなことを話したら、コイツを傷付けるかもしれねぇ。コイツは何も悪くない。
藤堂『あのね…お願いがあるの。』
海堂『何だ。』
藤堂『デートしたい!』
周りの奴らは騒然。俺は唖然…。
海堂『お前、こんな大勢のっ!!』
あ~、コイツ……首をかしげてる。忘れてた……コイツが天然なのを。
藤堂『悪いこと……言ったのかな?』
海堂『あ、嫌……そういうことじゃねぇ。』
藤堂『なら、良かった。』
あ~、コイツ……満面の笑顔だ。脱力感を感じ肩を落とす。
海堂『で、どこかに出掛けるのか?』
藤堂『あのね……薫くんのお家で、お料理したい!!』
周りから、『家っ!!?』の言葉が所々から聞こえてきた。
ハァッ……もう、どうにでもなれだ。
海堂『あぁ、分かった。なら、蕎麦打ちでもするか。』
藤堂『うん!』
どういうわけか、自宅に招くことになった。全く、コイツは……。
帰宅中、馴れ馴れし……あ、嫌……オープンに腕を絡ませてくる。
しかし、こんなヤツだがどういうわけか……惚れてんだよな。
天真爛漫さに救われる時があるのも事実。
海堂『香。』
藤堂『なぁに?』
海堂『次は……海にでも行くか。』
俺の言葉に目を見開いた香は、本心から嬉しそうな顔を見せる。
その笑顔を見ては、こういうのも悪くない……そう思う俺がいる。
そんな香の頬に顔を寄せては、軽く唇で触れる。
海堂『なぁ……いつか、本当の意味で一緒に料理……出来るといいな。』