第5章 あまく やさしく もどかしく
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俺の目の前で見せる、無邪気で幼い表情とも、
いつものクールな表情とも、友達に見せる顔とも少し違う時が彼女にもあった。
「~?おーい」
アキラが彼女の名前を呼ぶ時、彼女も、アキラも、
幼くて、優しい顔をするのだ。
(…相当惚れこんでるねェ、アキラも)
教え子の恋愛は見ていてとても心地よく、もどかしいもので
二人で他愛ない話を紡ぎながら、日誌に書き込む姿はとても愛らしいものだった。
「あ、」
「…ん?どうした神田?」
ふと顔を上げた彼女と目が合い、微笑み返す。
「…あ、アキラと2人っきりの時間に水を差すなって?んも〜神田ちゃんったら素直じゃないんだから!はいはい老いぼれはすぐに出ますよ〜」
幼い反応にくすくすと笑いながら、に向かっていつものジェスチャーを行う。
人差し指と、中指を唇につける。
(後で、煙草吸いにおいで)
「じゃ、書けたら準備室までよろしく〜」
「了解でーす。」
彼女はいたずらに笑って、小さく返事をした。
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