第1章 旦那様はバスケットボール選手/火神
「ただいまぁ…」
「おう、今日もお疲れ花子」
帰宅ラッシュでスーツをぐしゃぐしゃにしてしまった凹みがふわりと香る夕飯のかおりに脳が仕事から安住の地に戻った安心で切り替わる。でかい図体をキッチンに押し込んで、今日はサバの塩焼きと豚汁をつくっている。
「おいしそう、大我って料理上手なんだ」
「たりめーだ」
そう荒い言葉を投げかけてくるものの表情はどこまでもやわらかい。きっと幸せってこういうことを言うんだろう。手を洗ってうがいをすれば、卓袱台においしそうな夕飯が湯気をたてている。
「ほら、たくさん食え」
そういってご飯をよそうさまはどう見ても若奥様だ。なんて言ったら照れて小突いてくるんだろう。