第7章 【照島 遊児】お前がいないと楽しくない
「38.5℃。完全に風邪ね。昨日遅くまで遊び歩いてるからよ!今日は部活休みなさいね。母さん仕事行ってくるから」
バタンと部屋の扉が閉まって、シーンとした部屋に一人残された。
昨日の事が夢だったのではないかと不安になる。
スマホでひろかに風邪を引いたと連絡するけど、既読になったまま返ってこない。
昨日のは夢だったのか?
ガンガンする頭を押さえながら、もう一度眠りについた。
ヒヤッと額に冷たさを感じて目を開けると、そこにはひろかの姿があった。
「遊児?大丈夫?さっきおばさんに会って、鍵お借りしたの」
ひろかは濡れた布巾で俺の汗を拭いてくれた。
俺はその手を掴んで自分の頬へ持っていった。
「なぁ。昨日の夢じゃねーよな?」
「何言って・・」
「ひろか。・・なぁ、俺の事好き?」
「えっ・・何?急に・・遊児らしくない…」
「なぁ・・好き?・・昨日の夢じゃねーよな?」
掴んだひろかの手をギュッと握るとひろかは優しく握り返してくれた。
「夢じゃないよ。心配しないでいいから寝て?・・・ね?」
俺はひろかの声を聞きながら目を閉じた。
もしこれが夢ならば覚めなければいいのに。
俺はひろかの手を握ったままそんなことを考えていた。