第7章 【照島 遊児】お前がいないと楽しくない
あの頃はちょっぴり窮屈で、自由になりたい。そう思っていた。
「照島~。課題写させて~」
「無理。俺もやってねーもん」
「は?ひろかちゃんは?」
俺の課題はいつもひろかのノートを写させてもらっていた。
それを宛にして来た母畑に残念なお知らせだ。
「・・・別れた。ひろかとは別れた」
俺は机に覆いかぶさり、窓から見える空を眺めると雲一つない。
キレイだけど、少し寂しい感じがしたのはお昼前でお腹が空いているからだろうか。
「やっと別れたんだ。まぁ、しょーがねーよな」
「・・・なんでだよ」
「いや、お前。あんだけ自由にしてひろかちゃん泣かせてばっかだったんだから当たり前だろ」
当たり前。確かにそうだ。
ひろかとは中学の時に俺が告って付き合いだした。
ひろかは昔から可愛かったし、気が利くし、優しかった。俺のわがままにも我慢してくれていた。それがまた愛おしくて仕方がなかった。
高校も一緒の所に行きたいと言うひろかのために一緒に勉強をして条善寺に受かった。
高校に入ってからは付き合いも長くなったせいか、俺のわがままはエスカレートしていった。
ひろかとの約束をキャンセルして、男友達とナンパしに街に繰り出したりもした。一度その現場を見られて焦った俺に、ひろかは笑って、何やってんのよ、バカ。と言った。
周りからは理解のある彼女だなんて言われて、俺は更に調子に乗った。あいつは俺にベタ惚れで、俺が何をしても怒らない。そう思っていた。
初めてひろかが涙を流したのは、俺が罰ゲームで同級生の女子にキスをしたのがバレた時。ノリのキスくらいで面倒臭ぇな。なんて思った。
それでも、別れたくないとひろかが泣きながら自分にすがった。そんなひろかに心が満たされていたんだ。
それからと言うもの、俺は他の女子とより絡むようになった。
街でのナンパをはじめ、校内の後輩の女の子何かにも声を掛けた。
それがバレる度にひろかは泣いた。
俺が好きだと泣いた。
それが嬉しくて、ひろかの気持ちを確かめるかのようにわざとそんな事を続けた。