第5章 【彼女が見た夢】
艶やかな彩色の、
鮮烈な赤が目に眩しい
女郎部屋だった。
その廓のなかでも
とびきり豪華な布団に、
紗英は組み敷かれている。
行灯の火が落とすのは、
まぐわい重なる男女の影。
「紗英……っ」
「んっ……は、あ
白澤、様ぁ……っ」
体位を変え何度も交わる
白澤と紗英は恍惚として、
互いの眼(まなこ)を
食い入るように見つめ合う。
その瞳に宿る情熱たるや、
──まさに焦熱。
これが邪淫であったなら
熱く焼けた鉄串に、身を、心を、
ずぶりと貫かれたことだろう。
地獄の女郎に似つかわしく
妖艶な嬌声をあげる紗英は、
「いっそこのまま……貴方と」
業の炎に焼かれてしまいたい。
決して叶わぬ願いを胸に、
白のよく似合うその人を
心から愛した白澤自身を
文字通り全身全霊で
受け止めるのであった。