第1章 とある桜の木の下で
大学生になった春。
桜の花ビラは徐々に木から落ちていく。
3月の冬に屋上で言われた聖美からの”好き”。
異性からはっきりと、直接告白されたのは初めてで消えることのない思い出。
今でも聖美とは仲のいい友達。
一緒にゲームもやるし、遊びにも行く。
でも、ちらちら俺に見せる切ない表情が、俺の胸をも締め付けてきた。
あんなにつらそうな顔をさせるのは、俺のせい。
俺もずるい。
わかってたんだ、聖美が俺を好きなこと。
わかりやすい奴だから。
なのに、一緒にゲームがしたいがために、あいつのそばに居続ける。
ずっとあいつの理解者でいたいと思う。
大学の門に咲く桜の下で愛しい顔が二つ見えた。
俺の想い人の香奈ちゃんと、
俺を思ってる聖美。
どちらも俺の大切な人。
綺麗に散る桜の下で元気に、そして無邪気に笑う香奈さんと、
ふっと、切ない面影を見せながらも必死に笑う聖美。
当然のごとく、その風景に見とれてしまう。
ふと、聖美と目が合った。
「雅留!おはよう!」
「おはよう!」
切なげな表情と打って変わって、ぱっと花が咲いたような無邪気な笑顔で、手を振って俺を呼ぶ聖美に続き、香奈ちゃんも挨拶をくれた。
「おう、おはよう。」
挨拶をして二人に近づく。
あれ、俺、なんで聖美と目があったんだろう。
俺聖美のこと、見てた…?
「私たちも今日から大学生だね!同じクラスになるといいねー。」
「そうだな。」
おなじ学科の俺ら3人。
ここの学校は学科ごとでも人数が多いため2クラスに分けられていた。
「私らさきいっくよー!じゃぁねー!」
聖美は香奈ちゃんの手を取り、クラス分けの書き出してある掲示板に向かって走り出した。