第3章 *あめあめふれふれ【及川徹】
「あー……これ雨でも降るんじゃないの…?」
薄暗くなった空に、どんよりと広がる雲。
お世辞にも綺麗とは言えない梅雨空の下の靴箱前で、私は1人ぽつりと呟いた。
只今の時刻は17時55分。
部活動に所属してない私が、この時間帯まで学校に残っていたのは初めてだ。
「先生も起こしてくれたら良かったのに……」
今日こんな時間まで残っていたのは
昨日買ったばかりの本を読みたいから放課後の教室を貸してください。と頼んだところ、すんなりと許可を貰えたので1人静かに読書をしていた。そしたらいつの間にか眠っていた。…なんて漫画でよくありそうな展開。
ちなみに結局最後まで本は読めず、過保護な親が心配するだろうからもう帰ろう…と教室を出て、今に至る。
自分でも馬鹿みたいだと思う。
珍しく読書に花を咲かせてると思えば寝てた、って……誰かに見られてたもんならたまったもんじゃない。そもそも読書なんて私のキャラじゃないし、恥ずかしすぎる。
―まぁいいや、さっさと帰ろう。
そう思って自分の靴箱から靴を取り出し、履き替えた。そのとき―
「あれ、やっぱり起きてたんだ!」
背後から聞き覚えのある声が聞こえた。