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薄桜鬼 蓮ノ花嫁

第34章 離



 ――慶応四年、三月。

 変化の濁流に流され始める新選組は、薩長との戦いに備えて浅葱色の羽織を脱ぎ洋装へと着替えた。

 新選組は新たに幕府の命を受け『甲陽鎮撫隊(こうようちんぶたい)』と名乗り、甲府城へ向かうこととなった。同時に局長である近藤が大名として、名誉ある地位を幕府から頂戴する。だがそれにより、それぞれが思い描く新選組の形を失い始め徐々に内側から均衡は崩れ始めていた。


「だからっ! 此処は撤退するところだろ近藤さんっ!!」


 永倉の怒声が響く。それを目の前にした幹部達と、副長である土方、局長である近藤は大きく反応を見せない。


「甲府城が落とされたからなんだ、怖気づいたのか?」

「なんだと……っ!?」

「我らは幕命にて、名誉ある任を与えられているのだぞ!? のこのこと逃げるわけにはいかん! 城攻めを行う。隊士達を集めておけ」

「近藤さんっ!! あんたって人は何をっ!」

「新八っ、落ち着け」


 近藤に掴みかかろうとする永倉を、原田が抑え込んだ。近藤は表情を変えず、それだけ告げると黙り込んだ。新政府軍は旧幕府軍よりも先に、甲府城を落として籠城していた。城を先に奪われたことにより、戦況は更なる悪化を辿っていた。先手を打たれ、一気に隊士達も死に絶える。異国から取り寄せた武器が、旧幕府軍を確実に圧倒していた。


「俺が江戸へ行って、援軍を呼んでくる」


 そんな緊迫した中、土方が口を開いた。その言葉に反応して、未だぎらついた瞳で永倉は土方へと視線を向けた。

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