第23章 華
「ふっ、幕府の犬などおそるるに足りぬな」
「はっはっはっ! 新選組に目にもの見せてくれよう!」
やはり、この浪士達は屯所を襲うつもりなのかもしれない。志摩子が聞き耳を立てる。すると、突然千鶴が御酌していた男に言い寄られているのを見かける。
「ところでお前、もう贔屓の旦那はいるのかい?」
「えっ、わっ私ですか!? い、いえ……まだ」
「なら俺の目かけになるなら、今のうちだぞ?」
「ええ!? あ、いえ……そんなっ」
「初々しいのぉ」
「えっと……お、おかわりお持ちしますね!」
そう言って慌てて出ていく千鶴だが、すぐに浪士が後を追うように出ていく。それを見ていた君菊と志摩子は目配せする。
「あんさん、ちょいとあの子と一緒におかわりを持ってきてくれんかい?」
「わかりました」
志摩子は千鶴の後を追って部屋を出る。すると、廊下の隅で何やら不穏な空気の千鶴と浪士を見つける。いつもと違う着物のせいで、間に合いそうにない。そこへ……――
「山崎様!」
山崎が姿を現す。千鶴を庇うように。浪士の一人が「貴様何者だ!」と叫んでいた。その間に駆け寄ろうとした志摩子だったが、誰かに腕を引かれ近くの部屋へと引き込まれた。
「きゃっ!」
「静かにしろ……」
掴まれた腕を辿り、志摩子が顔を上げれば……そこにいたのは風間だった。