第28章 別れの日【土方十四郎】
「……悪かった…」
事後、土方は凛に上着をかけながらそう言った。
「もう二度とこんな事はしねえ。そして今日から局長付き小姓になれ。俺は…お前を利用した。」
凛は土方の上着をギュッと掴みながら首を横に振る。
「いいんです……私が好きで受け止めた事だから。」
「でも俺は…」
「土方さん。」
凛は目を逸らす土方の手をとった。
見れば、凛の顔には驚く程優しい笑顔が浮かんでいる。
「お慕いしてます。」
「お前……」
「ミツバさんには絶対勝てないのは分かってます。でも忘れないでください。私が側にいる事。」
私が土方さんの受け皿になります。
「………。」
土方は少しだけ困ったように笑い、凛の肩を抱き寄せた。
「前を向く努力はする。だが俺はあいつの事を忘れない…忘れられない。」
「それでいいんです。そんな土方さんだから好きになったんです。」
「…バカな女…」
「前を向くまでずっと、私が土方さんの事を支えます。ミツバさんからも土方さんの事を頼まれたんですから。」
「そうか……」
いつか、心の整理がついた時、こいつの為にもきちんと向き合おう。
そして今度こそ幸せにする。
土方は天を仰いだ。
ミツバ
お前を想えて、俺は幸せだった
ありがとう
━ fin ━