第15章 初詣【沖田総悟】
それからすぐに、俺は凛の腕を掴んで神社をあとにした。
二人でゆっくり話したかったから、とりあえずテキトーに公園のベンチに腰かける。
「あの…助けてくれてありがとうございました。」
「飼い犬にまとわりつく羽虫を追い払うのも、飼い主の仕事でさあ。気にすんな。」
凛はお茶を何とも器用にこぼさずここまで持ってきていた。
少し温くなったそれをすすり、飲み干して空にした紙コップをごみ箱に投げ入れた。
そして凛に向き直る。
「お礼を言いたいのはこっちでさぁ。」
「え?」
声が小さすぎたのか、凛にはよく聞こえてなかったみたいですねぃ。
俺は一瞬フッと笑みをこぼした。
「いや…ちょっと言っときてぇ事があるんで、聞いてもらおうと。」
「何ですか?」
「……俺は素直になんてなれねぇ。なるつもりもねぇ。姉上を忘れるつもりもねぇ。でも…あんただけは…そばで俺を見ていて欲しいんでさぁ。」
これでも精一杯気持ちを込めたつもりでぃ。
ちっと恥ずかしくなったが、凛の顔はそれを忘れる程穏やかな笑顔だった。
「そんな所も全部ひっくるめて、私は沖田さんの事大好きですよ。」
「……飼い犬が…生意気でぃ。」
頬が緩んだ顔を見られたくなかったが、初めて感じる愛しさに俺は凛の額に自分の額をくっつけた。
神社で願った宣言のような願い事はただ一つ。
― 大切な人をいつまでも守り続ける ―
━ fin ━