第5章 黒尾鉄郎
学校の帰り道CDショップによったのまがずかった。おかげで、このくそいまいましい満員電車に乗るザマだ。くそ、もうチョイ早く切り上げればよかった。
俺の目の前にいる女性は少し背が低めであっちからもこっちからも押されているようだ。大きくカーブを曲がった時バランスが崩れ、俺のほうに倒れこんできた。俺は慌ててささえてやる。
貴「す、すみません」
黒「大丈夫ですか」
新米OLといったところか、大きな書類鞄を2つも下げている。次の駅で降りようとしたとき、彼女は、イタっと小声を上げた。
よく見ると俺の袖のボタンに彼女の髪が絡まっているようだ。さっき支えた時にでもからんだのか。俺たちはとりあえず駅で降りた。髪の毛はますますからんでいく。
貴「ハサミあったかしら」
鞄の中をさがす。そして小さなソーイングセットのハサミを取り出した。
貴「とりあえず、このボタンの糸を切っていいですか」
黒「かまいませんよ」
彼女は器用に糸を切り取り、髪の毛とボタンをはずすことができた。
貴「じゃぁ、このボタンつけちゃうからちょっとまってね」
彼女はにっこりと笑い、手際よくボタンがつけられた。