第5章 4日目
「それは某らがこの森に来た頃でござるな」
どうやら彼等は森中の地形を把握し、どこに何があるかというのをわかっているみたい。
だから私が木を指さしていっても大体わかるんだとか。
「え、じゃあ私よりも年上、ってこと...?」
「ずっとずっと、某のほうが上でござるよ」
私が生まれた時にこの森にやってきた。ということは少なくとも20歳はいっているだろう。以前色々なところを渡り歩いてきたと言っていたから。
「この国が...大戦を、まだ人同士で殺し合いをしていた頃に某は産まれたのだ」
「それって、凄い前...?」
「もうどれだけ前であろうな。ここよりもっと遠い所で某は槍を振るっておった」
それから幸村は、私に昔の話をしてくれた。
幸村は尊敬する方の為に命を張って長くて重い槍を2本携えて沢山の人と戦ったんだとか。
その頃が私と同じくらいだったらしくて、そう考えれば幸村は数えてもう100歳以上だ。
「そ、なんですか。その...」
「某は産まれた時、殿と同じ様に人間でありました。人間の父と母の間に産まれた何ら変哲のない男児でありました」
「...何時からそういった体に?」
幸村は、私に全て話してくれるらしい。こんなことを聞いていいのか分からなかった私はなんだか複雑な気持ちだったけど。
「...佐助とあった頃であろうか」
「会ったって、怪我をしていた時の?」
「うむ、その時佐助は傷を負っていた。もうこれでは手遅れなのではないかというくらい、重症だった」
話すのがとても辛そうだった。きっとその時の状態が本当に想像したくないほど、私には想像ができないほど悪い状態だったんだ。
無理に、思い出させている。
「ゆ、幸村、話さなくても」
「聞いて欲しいのだ!!某の、過去を、殿に!」
その大きな目からは今にもこぼれ落ちそうなほど涙が溜まっていた。光に反射して、とても綺麗だ。
「....佐助は血を沢山流し、佐助自身の血だけではもう足りぬと、そう俺はわかった」
両手は震え、なんだか今にでも泣き狂ってしまうのではないかとそんな様子だった。