第12章 【淡い夢】
ジャーファルside
* * * *
彼女を突然失い、狂いそうになったけれど、私はシンドリアの政務官。
仕事に支障をきたす訳にはいかない。
徹夜の疲れを表情に出さないよう、いつもしていた作り笑顔が役に立った。
それに、ヤムライハやピスティが、ぼろぼろ泣いていたから、慰めるばかりで、自分が悲しむ暇なんてなかった。
(調度、今日で半年…か)
相変わらずの晴天の空を見上げ、私はぼんやり遠くを見つめた。
彼女の部屋は、今はもう埃まみれになっている。
開けてしまえば、殺し、押さえ込んでいた気持ちが溢れ出てしまうため、誰一人として入らない。
いわば、あかずの部屋。
(…どこにいるんですか、シェリル…)
国を滅ぼした大逆者として、彼女の名は犯罪者として、世界に知れ渡った。
崩壊したサラクには、殺された皇帝、兵士だけで、彼女の亡骸はなかったらしい。
捕まったなら、即刻、死刑。
…まだ、彼女が捕まったという知らせは届いていない。
「…どうか、無事で」
ようやく慣れた、静寂が包む部屋で私は、ただ、祈るばかり。