第12章 【淡い夢】
シェリルside
* * * *
「…シエルっ」
両手を広げる彼の腕の中に飛び込んだ。
そのつもりだった。
私の両手が掴んだのは、空虚。
《…やっぱり、無理か》
「…ごめんなさい、ごめんなさいっ」
ぎゅっと彼の骸を抱き、ぽろぽろと溢れる涙を流し続ける。
温かい、優しい手が、頭を撫でているのが分かった。
見上げれば、シエルは柔らかく微笑んでいて。
私を抱きしめる形でしゃがんでいた。
光の粒が彼から溢れて、姿が薄れていく。
《…そろそろ、還るよ》
「待って、行かないでっ!! 私も一緒に…」
《ダメだ。シェリルは生きなくちゃ、『あの人』の所に帰るんだろう?》
(…あの、人…?)
右腹に彼の手が触れると、傷はスッと治っていった。
そして、消えかかっている、すり抜ける手で私の顔を挟み、額にキスをされる。
《笑え、生きろ、生きろ…》
そう言い残し、愛しい片割れは消えた。