第10章 サンタクロース*スモーカー
「スモーカー、今日はクリスマスだな」
深夜1時。クリスマスという1日が始まったにも関わらず、まだ仕事を続けているスモーカーの前に、にゅっと顔を出した。
「あぁ………なんだその目は」
「ふっふっふ……私というサンタがやって来たぞ」
スモーカーが仕事をしている机の前に立つ。
「…大丈夫か、寝たほうがいいんじゃねぇのか」
「そんな哀れみを込めた目で見ないでくれ」
ちょっと顔よこせ、と机越しに額に手を当ててきて熱を測るスモーカーの行動に、はドキッとしながらも、平常心を保つことに集中する。
「はい。プレゼント」
「…?」
シンプルにラッピングされた包み紙を渡され、開けると中からは手袋が出てきた。
「スモーカーの使ってるやつ、ボロボロでしょ?馴染み深いだろうから本当に使えなくなったらそれ使って」
にこりと笑いながらは部屋を出て行こうとしたところを、煙になって椅子から彼女のすぐ後ろに移動し、きつく抱きしめた。
「ありがとな」
素直で真っ直ぐなお礼の言葉に、は顔が赤くなるのを感じる。
「大切にする」
「いいよ、むしろ使って欲しい。ボロボロになったらまた私がサンタになってプレゼントしてあげるから」
冗談交じりに言ってみると、あぁ、頼む、と言って葉巻を手に持ち、スモーカーが首筋に顔を埋めてくるものだから、頬の筋肉が緩んでしまう。
「お前が寝てるうちにと考えてたが…」
「え?」
スッとスモーカーが離れる感覚に、寂しさを覚えたが、その直後首に少し冷たい感触を感じる。
「お前のサンタからのプレゼントだ」
見ると、それは小さなハートをモチーフにしたシルバーのシンプルなネックレスだった。
「ありきたりなのと色気が無ぇのは許せ」
「そんなこと気にしないよスモーカー」
はスモーカーに抱きついた。
「私のサンタはあとどれくらいで仕事終わるんだ?」
「そうだな…10分だ」
「じゃあ、ここでまってる」
この後、仲良く聖なる夜を過ごしましたとさ。