第2章 被害者は加害者に?
「ん…ごめんね?」
スマホにぶつぶつ言いながら
あたしの方に来た大野さん
『……えっと、じゃあ行きます』
「ふぁ~…そお?
じゃあね、いちごちゃん」
『え?』
“いちごちゃん”って…
帰ろうとしたけど一旦止まって
大野さんの方を振り返った。
「浴衣いちご、みてーんだもん。
しかも、お姉さんねぇ
今、目が真っ赤っかだから」
あたしの顔を見て意地悪に笑い出す
大野さんにちょっと頬を膨らます。
「…ちゃんと泣ききるんだよ?」
『…え…』
急に真面目になってそんなことを言う
大野さんにまた泣きそうになって
すぐに後ろを向いた。
『か…帰ります。』
「ん…オイラも帰るかね~?」
直った下駄をまたカランと音をたてながら
歩いて、つい笑ってしまった。
大野さんのせいだとか言ったけど、
あたし下駄、当てたんだよね。
被害者を加害者にしたのか。
謝んないとな。って…
『もう、会えないか…』
行き交うトンボに呟くように言った。