Destination Beside Precious
第1章 about
前作までのあらすじ
オーストラリアから帰国して鮫柄学園に編入した松岡凛は、携帯電話を落としたことがきっかけで榊宮汐に出会う。
鮫柄が女子校の水泳部と合同練習をすることとなり、汐がその相手校である聖スピラノ学院高校水泳部のマネージャーだということが発覚した。
さまざまな偶然が重なり、また携帯電話のくだりから、凛は汐と友人関係になった。
凛の日課であるランニング中に汐と、会えば話す、会えば駅まで送っていく、ということを繰り返すうちに互いのことを知り、互いに惹かれあっていった。
鮫柄に編入して以来人に心を開けずに孤独だった凛だったが、よくしゃべりよく笑う汐といるときはその孤独を忘れることができた。
恋を知らない汐は次第に〝恋や好きという感情〟について考えるようになっていった。
夏も目前に迫り日に日に暑さも増していく中、凛は初めて汐の陰の部分を目の当たりにした。
そうしてやってきた県大会直前の鮫柄とスピラノの合同練習。
片付けの最中、汐はプールに落ちてしまう。
その汐を助けたのは凛だった。
水から引き上げたとき、凛は汐の怯えきった様子になにもすることができなかった。
そのことを悔やみながら凛はその日汐を駅まで送っていった。
悲しそうに笑う姿に胸が締めつけられる思いを覚えた。
次の日、凛はあの悲しそうな笑顔が気掛かりで風邪をひいたという汐の元へお見舞いに行った。
汐を見舞った凛は、汐から自分のせいでプールの事故が起こり親友を亡くした過去や本名に関係のないあだ名の由来の話を聞かされる。
やがて県大会がやってきた。凛は見事遙との勝負に勝った。
しかしそこで真琴に〝水泳における勝ち負け以外の何か〟を問われた。
これでもう前に進めると思ったがいたが岩鳶のリレーを目の当たりにして迷いが生じた。
この日を境に凛の表情が曇っていった。
それを汐は見逃さなかった。
凛は鮫柄でもう一度リレーを泳ぐ決意をした。
しかし凛が見ていたのは自分のチームではなく岩鳶SC時代のチームだった。
そのことを汐に見破られ凛は激昴してしまう。
しかし凛が汐に暴言を吐いたのは、単に迷いを咎められたからではなかった。
汐の口から他の男から聞いた話が出てきたことが癪に障ったからでもあった。
ことばが凶器になった瞬間だった。