第8章 寒い?
放課後、ひさしぶりに彼の部屋に来た。
と言っても、せいぜい2週間ぶりぐらいだけど、すごくひさしぶりに感じる。
気も重いし…。
「優子さん、答案用紙は全部返ってきましたか?」
彼が笑顔で尋ねる。
「うん…返ってきたんだけど…」
カバンの中から答案用紙を出して、彼に見せる。
……。
「数学が90点なんてすごいじゃないですか。もう苦手は完全に克服しましたね」
彼が嬉しそうに微笑む。
「うん…でも英語が…」
私はうなだれる。
「油断しましたか? ふふ。
でも優子さんはもともと英語が得意だからすぐ取り戻せますよ。それに今回の英語は少し難しかったですよね? 僕も88点でした。危なかったです」
彼が優しく励ましてくれる。
「うん…」
私は泣きそうになるのを必死でこらえる。
「あ、あの大丈夫ですよ。よしよし…」
彼は軽く私を抱きしめて頭をなでなでする。
「うぅ…ぐす…ぐすん…」
堪えきれなくて涙が出てくる。
「私、頑張ったんだけどっ…
雅樹くんに嫌われたくなくてっ…頑張ったのに…うわーん…」
「嫌いになんてならないですから…。好きです。変わらず…いえ、ますます好きになりました…」
彼が私の頬に流れる涙を指で拭う。
私は少しだけ顔を上げる。
彼が私の目をじっと見る。
……?
「あの、ありがと…。ごめんね」
少し落ち着いたので、私は彼に謝る。
「あ…。いえ。
何か飲みましょうか。温かいものがいいですよね。紅茶! 紅茶いれてきますね」
彼がなぜかあわてて部屋を出ていく。