第19章 夏
「ただいま」
夜、お風呂に入り、部屋に戻る。
ベッドの上に座ってる彼が、何か本をサッとカバンに入れる。
「あれ? 雅樹くん、もしかして勉強してた?」
彼に尋ねる。
「え? 勉強? ふ…そうですね、ちょっとね」
「勉強してたほうが落ち着くのかなぁ? 雅樹くんは」
彼の頬をぷにっとつまみながら茶化す。
「勉強が好きなんです」
彼がキリッと答える。ぷにっとされながら。
「勉強と私、どっちが好きー?」
私は彼の腕をぎゅっと握って、首を傾げて、唇をちょっと尖らせて、思いつく限りのぶりっ子をして、彼の顔を見上げる。
「優子さんが好き」
ニコッと笑って、彼が答える。
「うれしい」
私は彼にぎゅっと抱きついて、ベッドに押し倒す。
「あぁ優子さん、いい匂いがする」
私の首すじを、彼がそっと撫でる。
「美味しそう?」
彼の姿を見下ろして問いかける。
本当は逆。ベッドで私の下敷きになってる彼が美味しそう。
「美味しそう…食べたい、すぐに。でも僕もお風呂に入らせてもらいますね」
「うん」
身体を起こして、彼はカバンから着替えを取り出す。
「よかったら…優子さんも勉強しててください。参考になると思います」
そう言って彼が、さっき読んでいたらしき本を、私に手渡す。
こんな日に私が勉強するわけないじゃん。
そう思いながら受け取る。
ノートぐらいの大きさの雑誌。
表紙には際どい下着を着けた女の人が股を開いて…エロ本!?
「じゃ、お風呂に行かせてもらいますね」
彼はサッサと部屋の扉を開けて出て行った。