第18章 二泊三日
窓の外からこぼれる光で、すっかり日が高くなったのを感じる。
夏休みは始まったばかり。
外は気持ちよく晴れてる。
蝉の声も聞こえる。
小学生の私なら自転車のカゴにプールバッグを乗せて、友達を誘いに走り出すだろう。
高3で受験生の私はエアコンの効いた部屋にいる。
裸で。ベッドの上で。大好きな人と。
「お昼ご飯どうする?」
腕枕してくれてる雅樹くんに尋ねる。
……。
目を閉じたまま反応なし。
「ちょっと…! 信じられない、寝てるの?」
「んあっ? あっ…ごめん…」
ビクッと身体を動かし、彼が目を覚ます。
「なんで寝ちゃうのー? もう」
私は彼の脇腹をつかんで、ゆさゆさする。
「ごめん…。なんだかホッとしてしまって…」
「クスッ…」
ホッとしたんだ。
なんかわかる気がする。
でも勝手に寝ないでよ。
私は彼の頬をぷにっとつまむ。
「ふふっ…」
ちょっと嬉しそうに彼は笑う。
「僕は…」
彼は私の腰に手をまわし、ゴロッと自分の身体の上に持ち上げて乗せる。
私は彼の胸の上に乗っかって見下ろす。
「僕は何と戦っていたんだろう?」
「へっ?」
「どうしてあんなに我慢しないといけないと思っていたのかな…」
「……」
私は彼の耳に口を近付ける。
「自分自身と戦っていたんじゃない?」
「あぁ…うんうん…」
私の言葉に彼は頷く。
えっ、合ってるの?
「ふふっ…」
彼は唇に人差し指をあて、クスッと笑い、私の顔を見上げる。
「自分に負けるのは気持ちよかったです」