第9章 あなたの分まで
「私を助けてくれたのかっ...。
よくやったぞ!!」
場違いな発言をする
ダニエルに、神田がまた【六幻】を突き付けた。
「ふざけたこと言うんじゃねぇ」
冷ややかな瞳で見下ろされ、
ダニエルは今度こそ黙った。
オレは、小さく嗚咽を漏らす
リランの背中をゆっくり撫でた。
「.......か...つ」
「ん?」
リランの小さな呟きを聞き返す。
「...なんか複雑。
カジムが死んで、あいつが生きてるなんて」
憎々しげ、というよりは
悲しげにリランは言う。
リランの言葉にオレは苦笑した。
「そんなこと言っちゃダメさ。
さ、帰ろうさ。
オレ達のホームに」
リランの腕を掴んで引っ張り起こす。
「ぜってえ許さねぇからな」
ダニエルを振り返り吐き捨てる。
神田が【六幻】を納めて、
オレ達の隣へ来た。
「帰るぞ」
リランはまだ泣いていたが、
その一言には嬉しそうに顔を綻ばせた。
「うんっ!!」
「ああ、帰るさ」
雨上がりの空に、
鮮やかな虹が架かっていた。