第28章 これから、君と
突然、声が響く。
「随分楽しそうですね、ラビ?」
黒い笑みを浮かべたアレンが、
つかつかと部屋に入ってきたのだ。
「.......アレン。
少しは空気読もうさ...?」
「残念だけど、私もいるわ」
アレンの背後からリナリーも現れる。
ずんずん近付いてくると、
私の腕を掴んでラビから離した。
「駄目よ、ラビ。
リランは純粋だから」
「いや、リナリーの方が...」
「リランは黙ってて」
リナリーの目には、
私のことを思いやれという気持ちが
見え隠れしている。
― リナリー、優しいね...。
しかし、一度誘ってしまった側としては
複雑な思いだ。
でも過去に触られると、
どうなるか自分にも分からないし...。
「ん、ごめん。気ぃ付けるさ」
私が考えている間に、ラビが
素直に謝った。
すると、リナリーもアレンも
怖い顔をすぐに笑顔に変えた。
「おかえりなさい、リラン。
無事で良かったわ」
「呪いを受けたって聞いてたけど、
今は?どうなの?」
そういえば、ラビと会えたことが
嬉しすぎて言うのを忘れていた。
「うん、アザは消えたから、
呪いも消えたんじゃないかなって。
でも歌姫の力がどうなってるか分からないの」
そう言って、胸元を押さえる。
不安で引きつった笑みを浮かべて、
ラビ達を交互に見比べた。
「だから、多分、方舟で実験があると思う。
歌姫の力があるかないか。
もしなかったらどうしよう......。
イノセンスも復活してくれないし...。
私、もう役立たずかなぁ.......」
― 怖いなあ.......
ため息を吐いたとき、私のおでこを
ラビがデコピンした。
「てっ...」
「ばーか。リランの頭の中はそれしかないんさ?
守るっつったろ、どこにもやるかよ」
かっこいいセリフでも、
デコピンがショックだ。
「う~.......」
涙目の私を、リナリーがよしよしと撫でてくれた。