第27章 君の傍に
「説明しろ」
神田の言葉に一瞬迷ったのか、
目線を下にさげた。
「アクマのウイルスを入れられたの。
歌姫の力を殺されようとしてる。
奏者の傍にいると
力が暴走してしまうの。
みんなを...殺させないで」
「それ、リランも危険なんじゃ!?」
「大丈夫だから。いずれ毒は抜ける、
そしたらまた戻るよ。
必ず生き延びるから...」
「待ってる」
苦しそうなリランをもう一度抱き締めて、
リランの言葉の続きを
耳元でそっと囁いてから離れた。
「行くぞ」
神田に言われ、
後ろ髪引かれる思いで店を後にする。
道中、リランの無事を素直に
喜ぶことは出来なかった。
それでも充分朗報だろう。
「リランが...見つかった?」
本部に戻ってから報告すると、
コムイは驚愕の表情を浮かべた。
「ああ。無事といえる状態じゃねぇけど。
...生きてたさ」
「それ...本当なの、ラビ」
「リナリー.......」
同じく驚いた顔のリナリーが、
その場に泣き崩れた。
「生きてて...くれて....
本当に良かったッ.......」
「...無事じゃないってどういうことだい?」
目元に滲んだ涙を拭い、
心配そうに聞くコムイ。
「本人によると、アクマのウイルスで
歌姫の力を殺されようとしてるらしい。
奏者の近くにいると力が暴走して、
みんなを殺してしまうって言ってたさ」
「じゃあ、歌姫の力は喪われるのか...」
「そんなの、リランが生きてるなら
どうでもいいさ」
「...そうだね」
オレには待つことしか出来ない。
だから、リランが帰ってきたら
オレが一番に抱きしめる。
生きていてくれれば、それだけでいいから。
愛してる
胸のうちで、そっと囁いた。